JCEIA 一般社団法人 日本化学品輸出入協会

安全保障貿易等について

はじめに

 近年、中東をはじめ世界各地で紛争などが続く中、我が国をはじめとする主要国では、大量破壊兵器等の武器や軍事転用可能な民生用の製品、技術などが国際社会の安全を脅かす国家やテロリストの手に渡ることを防ぐため、各種条約等による国際的な枠組みを作り、協調して輸出等の管理が行われています。

 我が国の外国為替及び外国貿易法(外為法)では、輸出等は原則として自由となっていますが、こうした安全保障の観点に立った貿易管理やその他国際約束の履行等の必要性から特定の貨物・技術について規制が行われています。

安全保障貿易管理等を巡る情勢

 安全保障貿易管理の国際的な枠組みには、通常兵器関連のワッセナー・アレンジメント(WA)、核兵器関連の原子力供給国会合(NSG)、化学兵器と生物兵器関連のオーストラリア・グループAG)、及びミサイル関連機材・技術輸出規制(MTCR)の4つの国際輸出管理レジームがあり、またこの他にも核不拡散条約(NPT)、化学兵器禁止条約(CWC)及び生物兵器禁止条約(BWC)などの輸出管理関連の条約が存在し、我が国はこれらすべてのレジームや条約に加入しています。

 国内では安全保障貿易にかかる国際的な枠組みにおける見直しに従い、輸出貿易管理令別表第一に掲げられる貨物(「リスト規制貨物」)にかかわる法令がたびたび改正されております。

 近年、技術の進歩はめざましく、先端技術を駆使した民生用工業製品には容易に軍事用途へ転用できるものも多く、新たに市場に出回る工業製品もリスト規制貨物に加えられております。一方で、技術の陳腐化に伴い規制する意味がなくなったものは規制対象から外されています。その他国際約束の履行等の必要性から規制が行われている輸出貿易管理令別表第二に掲げられる貨物についてもしばしば改正されています。また、外国為替及び外為法では、役務取引(技術提供)に関する規制強化に係る改正がなされています。

 昨今、米国と中国は貿易摩擦など通商問題をはじめ、政治・経済などさまざまな局面で主導権争いを行っており、2019年に入って、両国の対立がさらに表面化しつつあります。米国では通信を含む先端技術に関する規制を強め、中国企業を排除する動きを進めており、これにより規制の対象がAI、3Dプリンター、量子コンピュータなどの民生用の製品にも広がり、日系企業への影響も心配されます。対して中国では対抗措置として、2020年12月に国益重視の色彩が強い「輸出管理法」を施行し、再輸出やみなし輸出などへの規制をかけようとしています。

 こうした状況が今後益々エスカレートしていくと、安全保障貿易管理等の国際的な枠組みのレジームに係るコンテンツの見直しが行われ、これに応じた国内法の改正が予想され、その動向は常に注視していく必要があります。

協会の取り組み

 当協会では貿易管理委員会及び下部組織としてWG等を設置して、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいて規制されている特定の化学品(輸出貿易管理令別表第一および第二に定める品目等)に係る問題や課題に取り組んでいます。特に政府により関連する法令・制度が新たに制定されたり、改正されたりする局面に際しては、経済産業省など関係当局に対して意見書・要望書等を提出し、業界が抱える諸問題等の解決に努めています。

 また、これらの業界活動以外にも、日常の会員サービスの一環として、コンプライアンス対応を支援する以下の諸活動を行っています。

  1. 個別相談への対応
     輸出貿易管理令 別表第1・別表第2及び外国為替令別表等に係る相談に応じ、それに対する処置案や解決法を回答しています。輸出品の「該非判定」といった問題についてもアドバイスしています。
  2. 情報の共有
     安全保障貿易管理等に係る情報は日々、国内外の関連当局から公開されており、それら情報を確認・収集し、必要に応じてコメントを添えて連絡しています。
  3. セミナー・講習会の開催(非会員も参加可)
     安全保障貿易管理等に係るテーマを選定し、当局担当者をはじめ専門家を講師としたセミナーを有料で催しています。
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  4. 輸出管理化学物質検索用リストの提供(非会員も購読可)
     安全保障貿易管理等の業務に従事する方々が該非判定等に際し参考にすることができるよう、さまざまな化学物質名(総称名、慣用名等を含む。)に対応する輸出貿易管理令(輸出令)の該当規制品目などを検索することができるリストを有料で提供しています。
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