JCEIA 一般社団法人 日本化学品輸出入協会

化学品管理について

はじめに

 化学物質はあらゆる製品の原材料として私たちの生活を豊かにし、なくてはならないものとなっていますが、適切に管理されなければ、深刻な環境汚染や人の健康に有害な影響を及ぼす恐れがあります。

 20世紀後半より、化学品管理はグローバルで重大な環境課題の1つとして、全世界で取り組まれており、欧州、米国並びに日本における関係法令の大幅な改正が先導するように、中国をはじめとするアジア諸国や世界各国において法令の整備、運用強化が急速に進んでいます。

 化学品の輸出、輸入そのほかの取引に当たっては、これら国内外の法令を遵守することが不可欠なものとなっています。

化学品管理を巡る情勢

 世界各国の経済が成長するにつれて、負の側面である環境汚染も地球規模で広がり、環境保全に対して国際的な取り組みの必要性が提唱されることになりました。化学品管理は、その国際的な環境課題の1つです。

 1992年に開催された国連環境開発会議では、化学物質を管理するために取り組むべき事項が具体的に列挙され、その10年後、2002年に南アフリカのヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関する地球サミット(WSSD:World Summit on Sustainable Development)では、化学品管理における世界的目標 「予防的取組方法(precautionary approach)に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順と科学的根拠に基づくリスク管理手順を用いて、化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成することを目指す。」が合意されました。

 これらの世界的な合意が示す化学品管理の方向は、以下のように整理できます。

  1. 化学品の危険有害性の分類と表示を世界的に調和する、即ちGHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)の導入
  2. 化学品の危険有害性とばく露(摂取)量を考慮したリスクに基づいた化学品管理の確立
  3. 化学品の製造から使用、更に廃棄までのライフサイクルを通した化学品管理の構築

 世界各国は、欧州におけるREACH規則の制定に見られるように、これらの目標に向かって化学品管理法令を整備し、管理の強化を図っています。今後は、2015年に国際連合で合意されたSDGs(Sustainable Development Goals ; 持続可能な開発目標)と関連付け、循環型社会の構築を目指した化学品管理が展開されていくと予想されます。

 日本の化学品管理は、昭和40年代半ばまでは、毒物・劇物の管理、労働者が直接取り扱う化学物質の製造と使用、及び工場から放出される排ガスや排水等についての規制措置が講じられるに留まっていましたが、昭和48年の化審法成立以降、順次、整備され、現在では化学品の有害性とばく露の観点から綿密に制定されています。

 WSSD2020目標を受けて、化審法は平成21年に改正され、既存化学物質を含むすべての化学物質を一定量以上製造・輸入した事業者には当該数量及び用途の届出が義務付けられ、国は届出情報等を用いたスクリーニング評価により優先評価化学物質を絞り込み、リスク評価を実施していくことになりました。続く平成29年の改正では、化審法の審査特例制度(少量新規化学物質、低生産量新規化学物質)における全国数量上限が、「製造・輸入数量」から用途情報も加味した「環境排出量」に変更されました。化管法においても、指定化学物質の選定基準がハザード(有害性)ベースからリスクベースに変更されつつあります。労働安全衛生法についても化学品よる労働災害を減少させるために、職場における化学物質等の管理はどのようにあるべきか検討されています。

 今後も国内の化学品規制は、世界的な化学品管理の動向を踏まえつつ、国内の事情を考慮に入れた改正が継続されていくと想定され、その動向は常に注視しておく必要があります。

協会の取り組み

 当協会では化学物質安全・環境委員会及び下部組織としてWG等を設置して、国内外の化学品管理に係る問題や課題に取り組んでいます。特に政府により関連する法令・制度が新たに制定されたり、改正されたりする局面に際しては、経済産業省など関係当局に対して意見書・要望書等を提出し、業界が抱える諸問題等の解決に努めています。

 また、これらの業界活動以外にも、日常の会員サービスの一環として、コンプライアンス対応を支援する以下の諸活動を行っています。

  1. 個別相談への対応
     国内外の化学品管理に係る相談に応じ、それに対する処置案や解決法を回答しています。
  2. 情報の共有
     化学品管理に係る情報は日々、国内外の関連当局から公開されており、それら情報を収集・確認し、必要に応じてコメントを添えて連絡しています。
  3. セミナー・講習会の開催(非会員も参加可)
     国内外の化学品管理に係るテーマを選定し、当局担当者をはじめ専門家を講師としたセミナーを有料で催しています。
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  4. 化学物質等国内規制法一覧の提供(非会員は有料で購読可)
      化学物質等に関する規制は複雑かつ多岐にわたっており、法令遵守のためには、まず、どのような法令等がかかわっているか把握する必要があります。また、製造や輸入はもとより製品の研究や開発に当たっては、そうした関係法令を事前にチェックしておくことが不可欠です。年に一度、化学物質等の国内規制にかかる法令、条約、その他の基準等を一覧の形に整理したデータを提供しています。
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